北海道新聞朝刊のコラム「朝の食卓」に記事を執筆しました。
パイオニアラボがある阿寒の森について書きました。
「生まれたての森」 有明 正之
私の住む阿寒の森は、一度皆伐された森林が自然に再生して出来た2次林だ。地元の人の話では、終戦後にほとんどの木が切られてしまったのだそうだ。
痛ましい話ではあるが、戦後60年以上たった今では、夏にはうっそうと葉が生い茂る立派な雑木林にまで回復した。
この森の中で、わが家の建つ一帯だけは1ヘクタールほどの広場になっている。
引っ越して来た14年前、この広場は一面の笹原だった。家の周辺だけは刈り払ったが、大半はそのまま放置しておいた。
ところが5~6年過ぎたころから、笹のあいだから萩の木が生えて来た。数年たつと、かつて笹原だった場所は萩などの低木で覆われるようになった。
最近では低木のあいだからハンノキやエンジュなどの樹木の若木が頭をのぞかせている。この調子で行ったら20年後には若い雑木林に育つのだろうか。数百年後には太古の森になるかも、と思うと実に楽しい。
森林の育成といえば枝打ちや下草刈りを思い浮かべるが、あえて手を加えずただ見守る事も一つの方法かもしれない。人間から見た生育はいくらか遅れるかもしれないが、森林のライフサイクルから見たらほんの一瞬にすぎないのだから。
生まれたての森の成長をこれからもずっと見守り続けたい。
(パイオニアラボ代表)・釧路