2月 052010
 

北海道新聞朝刊のコラム「朝の食卓」に記事を執筆しました。

薪ストーブを使って感じたことを綴っています。


「火のある暮らし」 有明 正之

我が家の暖房は薪ストーブだ。森の暮らしを思い立った時、燃料は薪を使おうと考えた。再生可能なエネルギー源であり、正しく使えばローインパクトな生活が出来ると思ったからだ。

薪の良さは環境への優しさだけではない。パチパチと木のはぜる音や炎のゆらぎは人間の五感にも優しく、火力が強くてもまろやかな暖かさはポカポカと心地よい。

人類の祖先は、火を手に入れコントロールすることで、闇の恐怖から解放され文明を発達させたと言う。薪ストーブに限らず、たき火やローソクの炎が心地よいのは、そんな太古の記憶が呼び覚まされる為かもしれない。

ストーブの中とはいえ家の中で薪が盛大に燃えているのだから、安全には細心の注意が必要だ。そのうえ、着火してから暖かくなるまで時間がかかり温度の微妙な調整は効かない等、今時の暖房器具に比べると原始的で不便な道具である。

科学技術が発達し、オール電化や電磁調理器の普及によって日々の暮らしの中から「火」が消えつつある。安全で利便性の高い「新しいエネルギー」が、使い方によっては危険な「火」に取って代わるのは、当たり前のことである。

けれど火のない暮らしは、私にとってひどく味気ない世界に違いない。多少不便で手間がかかっても薪ストーブを使い続けようと思っている。

(パイオニアラボ代表)・釧路